第1章 学習意欲を研究するということ③

内発的・外発的動機づけ

今回はP17~P20で述べられている動機づけ研究に関する主要な論点の一つである、内発的・外発的動機づけについて要約してから考察する。

(要約)

筆者によると、内発的・外発的動機づけの研究では、両者の関係が大きな焦点となってきたということだ。簡単に言えば、内発的動機づけとは課題や活動そのものを楽しむことに基づいているのに対し、外発的動機づけでは、報酬や目的達成のために活動をするという違いがある。

動機付けの初期の研究において、内発的に動機づけられていた活動に対し、外発的報酬を与えた結果、その活動への関与が減少することが示された。これは外発的報酬によって動機づけが強化されるという
理論に反する意外な結論であった。とはいえ、両者の関係は単純に決定づけられるものではなく、複雑に絡み合っていると述べられている。

本書で例として、大学教授、警備員、自動車整備工の3人が挙げられ、仕事への動機づけが自分の内面的な性格や外的な諸要因で、内発的であったり外発的であったりする現象が同時に起きていることが説明される。

また、教育においては、学生に内発的動機をもって学習を楽しんでほしいというような教師側の理想が語られるが、現実的な多くの学校の活動は外発的動機づけに依存していると指摘される。子供たち、学生たちも将来の進学や就職といった外発的理由で学校に通っている。ところが観察すると子供たちは強い好奇心を持ち、学びに積極的である場面も多く、ここには矛盾が存在している。

デシとライアンは自己決定理論を提唱し、動機づけを内発か、外発かという二分法ではなく連続体として捉えた。それによると無動機づけ、内発的動機付けに加えて外発的動機が4種類に細分化されている。つまり外発的動機は単一の形ではなく多様であるということだ。

これらを踏まえ、教育における動機づけについて教師は学習者の動機の方向性を尊重しつつ、良い成長につながるようガイドしていくことが求められると筆者は述べている。そして内発的、外発的動機付けの複雑な関係性を念頭におくことが大切だと示唆している。

(考察)

この章を読み、改めて学ぶことに対する動機づけを教師は日ごろから意識することが必要だと感じた。クラスの一人一人の学習者を見ていると、同じ課題をやっていてもその過程や結果は本当に異なっている。課題の性質によらず同じような取り組みをする学習者もいれば、課題による結果の差が大きい学習者もいる。おそらくそれは内発的、外発的動機づけが少なからず影響していると思われる。

外発的動機づけがネガティブな場合、例えばテストで合格点をとれない人は再試験とか、宿題を出さない人は居残りとか、そういったものが増えるほど教師が権威者となって学習者はコントロールされる存在になりがちだ。一方、トップスリーの成績をとった人にご褒美・・・などのポジティブな外発的動機づけを設定した場合、一時的に学習者の意欲は活性化するかもしれないがその効果は永続的ではないと思われる。

教師は外発的動機づけをコントロールしながら必要なタイミングで効かせることが必要だと思う。そして一人一人の学習者の内発的動機がどのようなときに高まるのかを知る努力を続けることが大切なのではないだろうか。同じ学習者であっても内発的、外発的動機は一定ではなく日々変化し続けるものだと思う。学習者を自分の枠組みでジャッジしないように気を付けたいと思う。年間を通したカリキュラムがあらかじめ決まっている中で、クラスの雰囲気や特徴、最終ゴールとなる目標を念頭に、どのように取り組みへの意欲を高めていくかはとても難しい。これから本書の動機づけ方略をまとめていく中で、理論を具体的な実践として、どう運用できるか考えていきたいと思う。

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