日本語教師のための読解授業ブラッシュアップ

動機づけについて学ぶことは授業をデザインするために役立つ

今回は、『Reading in a Second Language』第10章P225~P226で述べられている動機づけ理論の定義や種類についての背景と、5つの確立された理論のうち、1つめの期待価値理論についてまとめてから、最近の授業で学生の様子を見ていて感じたことについて書きたいと思います。

どうすれば学生のやる気を引き出せるのかを学ぶための第一歩

動機づけは、学習において中心的な役割を果たす。それは、個人の目標・価値観・信念に基づく心理的、行動的要素であり、努力、戦略的問題解決などの行動として表れる。そして社会的、文脈的な影響を受ける。動機づけの高い学習者は楽観的で、困難な課題にも取り組む意欲があり、自分の能力を理解し、成功を期待し、学習や環境のコントロールを望み、成果に喜びと誇りを持つ。このように冒頭で述べられており、積極的な動機づけが、効果的な学習行動につながるとしている。

確立された動機づけ理論には、期待価値理論、原因帰属理論、社会的認知理論、目標志向理論、自己決定理論などがあり、文章を読むという場面において動機づけを解釈する際にも一定の一貫性がが認められると述べられている。

期待価値理論では、達成は「成功できるという期待」と「その成功に与えられる価値」の組み合わせによって生じると考えられている。成功への期待は、過去の類似課題での成果や自己概念、自己効力感などと関連するということだ。一方、成功に与えられる価値の観点からすると、価値は学習者の目標に対して肯定的なメッセージを受け取ることと結びつき、学習への取り組み、目標の重要視、目標達成に役立つとされている。期待と価値には複数の次元があり、期待には自己効力感、統制の所在、能力に対する考え方、成長志向(努力で改善できるか)が含まれる。そして価値には内発的動機、自己制御、重要性、自己規律などが含まれると述べられている。

この章を読んで

範囲が明示された同じパターンの定期的なテストをクラスでやっていたところ、動機づけがその原因で解答の正否が分かれる問題があることに気づいた。ある程度努力すれば満点をとることもそう難しくない大問が2つある。どちらも漢字や語彙の読み方や意味を問う問題だ。テスト範囲は明確で、出題が予想される漢字や語彙もそれほど多くない。にもかかわらずその部分が白紙だったり、解答がでたらめだったりする学生がいる。

しかもテスト前にその大問部分の対策として復習も行っているにもかかわらず・・・だ。白紙に近いとかでたらめの解答だった学生は、まず成功への期待がないのだろう。そして成功に対する価値を見出せないのか、成功したい気持ちがあっても努力しようという行動につながらないのかもしれない。

積極的な動機づけのためには、自己効力感を持ったり、自己規律ができたりすることが必要だとこの章では述べられていた。教師はどうすれば学習者が自己効力感を育てていけるのか、教室のあらゆる活動のタイミングを利用して、授業でそれを醸成していくことを意識する必要があると思った。

授業で学習者に提示するテーマや課題が、挑戦的でありかつやってみたい、やれるだろうと前向きな気持ちで取り組めるようにガイドし、できた、やってよかった、価値があったと思えるような学びを重ねていけるようにすればいいのだろうか。

教師も、学習者にとっての成功、期待、価値というキーワードを結び付けながら授業をデザインする方法を学び続けていくことが大切なのかもしれない。

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