16項目のカリキュラム原則⑯

読解と内容学習を統合する

今回はいよいよ16項目のカリキュラム原則の最終回になる。P446~P447に書かれている原則⑯について要約してから考察する。

(要約)

原則⑯では、読解カリキュラムを効果的にするためには、内容学習と読解スキルの発達を組み合わせることが必要であることが言及されている。これはヨーロッパでは一般的に内容と言語統合型学習(CLIL)と呼ばれている。

筆者によると適切に開発された継続的な内容学習と読解の指導は、特に高度な学ぶための読解、すなわち学問分野での読解に適しているということだ。ただし、年齢的に小学校5年生以降から効果的に機能する。読解と内容学習を統合することによる利点には以下のようなものが挙げられると述べられている。

*読む機会の拡大
*学習意欲を高める体験
*複雑な課題に挑戦するための戦略的対応
*教材選択の自由度の向上
*テキストの内容に対する活発なディスカッション
*プロジェクト型学習の機会提供
*複数のテキストの再読
*複数のテキストからの情報統合、評価、解釈の実践

このように、「読むこと」と「学ぶ内容」を同時に扱うことにより、ただ読むだけでなく、内容理解、批判的思考、情報統合、評価などに対し、学習者が活発に取り組む学習を可能にすると述べられている。

(考察)

原則⑯で述べられているように、CLILを読解カリキュラムに取り入れることによる利点は大変多いことがわかった。内容が自分の興味関心と合致していたり、身につけたい技術や学問に関係することであったりすると、学習者の学習に対するモチベーションの向上にもつながるだろう。学生が日本で取得したい資格の勉強のために、その過去問題集やテキストを自ら買い、休み時間に取り組んでいたのを見たことがある。就職のために必要な資格で、専門用語が大変多く、一字一句読み進めるのに苦労していた。

それはさておき、クラスの授業でCLILを取り入れるときには、この章で述べられていたようなプロジェクト型学習や関連する他の資料などもはさみながら、授業の組み立て方に工夫が必要になるだろう。

以前、SDGsについて資料を読んで学びながら、グループで発表スライドを作成し、2クラス合同で発表会を行ったことがあった。日本語学校や大学での通年カリキュラムの中で、できるだけこのような内容と言語統合型学習を今後も取り入れたい。

プロジェクト型学習のような大きいものでなくても、日ごろの授業で気軽に取り入れたいが、そのための教材を探したり作成したりすることが必要になる。生教材には著作権の問題も出てくる。そんな時に生成AIを使って、内容統合型学習用の文章素材を作れないだろうかと考えている。

今回で16項目のカリキュラム原則のまとめが終わる。次回から、数回に分けて振り返りを行い、これらの原則をどのように実際のカリキュラムや授業で運用していけるのかについて書きたいと思う。

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