JLPT読解について授業でやってきたこと
大学や日本語学校で授業をしていると、JLPT(7月と12月)の1か月~2か月前から、そのための対策授業で教える機会が増える。教師は、通常通りチームティーチングで教材を予定表に従って進めることになる。そんな中、読解の教え方については、教師間での共有が、文法のそれに比べてとても少ないと感じる。
そこで、自分がこれまでにやってきたことについて、忘備録?がてら少しずつ書いていこうと思う。特に、学術的な背景やエビデンスがあるわけではないが、大学院で読解力の向上に関するテーマで修士論文を書いたので、その時に学んだことは授業に生かされていると思う。これとは別に、今まで、このブログに書いてきた16項目のカリキュラム原則を読解授業にどう組み込んでいくかは、また別のトピックで書きたいと思っている。前置きが長くなってしまったが、ここでは、読解をどう教えたらいいのか、私が悩みながら実践してきたことをラフに書いていけたらと思う。
N3読解問題 ~短文問題をどう教えるか~
なぜいきなり、ここからスタートなのかというと、つい2日前にN3短文読解の問題をどう授業で扱うのかについてある先生と話し合ったからだ。(こんな話し合いをするのは本当に久しぶりだ)
ある文章を読んで質問に答えるというのは、試験のための練習ということで、そこには必ず質問と選択肢がぶら下がっている。JLPTの場合は多肢選択式(4択)の問題で、短文の問題では、質問が1つだ。そうなるとよく言われるのが、まず本文を読む前に、質問と選択肢に目を通せということだ。なぜなら、選択肢を読めば、本文に書いてある内容を読み取る手がかりを得られるからだ。
ところが、短文問題の場合は、300字程度の文章で、段落も、形式段落が1段落しかない場合がある。先に選択肢1つ1つに目を通しても結局、文章を最初から最後まで一通り読まないと、答えがわからない場合がある。(文章によるが)そこで短文問題で必要になるのは、ある程度の速読力だ。語と語の塊をすばやく認識しながら、最後まで通して読み、ざっと全体の内容を把握する力が問われる。その際、一文の中にいくつも読めない漢字があったら、漢字圏の学習者以外、推測しながら読み進めることはできなくなり、何が書いてあるのか、さっぱりわからなくなってしまうだろう。
漢字語彙の習得は個人差もあり、授業で読解を扱う際、学習者にスマホの使用を任せていたら、読めない漢字、わからない語彙をずっと調べている学習者が出てくる。そのため、JLPTの読解授業以前に、N4からN3に進んでいく学習者に対する、漢字、語彙、読解を一体化したトレーニングが必要だ感じている。(JLPT読解練習に入る以前の課題)使用教材それぞれが問題なのではなく、学習者にとって対策授業でN3読解問題を解くのが、いきなりすぎるという現状があるのではないかと感じてきた。
では現状の中、どうやって読解授業を展開していけばいいのか考えた。まず、教科書で扱われている文章、例えばN3の短文読解練習としたら、その進め方のコンセプト、目的と目標を学習者(クラス)のレベルに沿って明確に定める。これは教師側の目的と目標だ。学習者にとっての目標は、N3に合格するために、読解問題の読み方のコツを身につけ、正答率を上げることだ。ただそこだけなく、日本語の文章の読み方そのもののについて学ぶことが大切であり、N3がその本格的なスタート
と言えるのではないだろうか。
次に、そのクラスを担当する教師がコンセプトに沿って、チームで意図的に学習者に教えていく。その際に、事前の分析が必要だが、教科書で扱われている文章の型や、設問のタイプで、同じタイプのものを集中的に練習し、それに慣れたら別のタイプのものを練習するといいのではないかと思っている。これらを踏まえて、具体的に短文読解練習の進め方には、次のようなやり方が考えられる。
1 実際の試験を意識して、制限時間を設け、各自、速読を意識して読む。本文を読み始める前に、設問の問いの部分だけを読み、選択肢には目を通さず読む。本文を読み終えてから、設問の問いに適合する選択肢を探す。(この時に使うストラテジーはまだ別の機会に)
2 制限時間が来たら、終了。どこまで読めたか、答えまで選んだか確認。
このあと、正答とその根拠がわかってしまうと、いっきに文章への関心を失い、集中力が途切れてしまう学習者が多い。そのため、まずペアで答えと根拠の確認、次に、グループですりあわせをさせ、最後に、グループの代表が答えとその根拠になる部分がどこなのかを発表する活動などをはさむ。
3 学習者の発表のあと、選択肢の文中の語彙が、本文の中でどのように言い換えられているかの確認。(JLPT文字語彙、言いかえ類義問題の練習にもなる)
4 そして、精読に入る。文章の中に出てくる、副詞、接続詞の意味と機能の確認、カタカナ語彙の意味確認、一文が長い場合の構造(修飾部と被修飾部、主語の省略、視点(授受など)の確認をしながら、音読して確認する。N3文法も確認。
5 文章の文末表現の確認。事実を述べているのか、筆者の主張なのか、問題提起なのか、定義なのかなど、毎回確認し、意図的に教えていく。
6 文章の中で最も大切な文はどれか。なぜなのかについて押さえる。(この時、教科書の文章に各自で一文ごとに番号を振らせると、発表しやすい。)
7 文章にタイトルをつけてみる。(学習者がつけたタイトルは、主旨の理解を表す)
8 もう一度、各自速読し、文章の内容について一言でまとめる練習をする。(パラフレーズの練習、穴埋めタスクなどにして、最初は補助をつけるといい)
これら全部をやる時間がないとしても、1~3までは必ずやり、残りはその問題の文章に応じて、いくつかをやることにする。そして、担当する教師間で引継ぎを共有し、継続していけるといいと思う。

コメント