書き順と字形はどのぐらい大切なのだろう
漢字の授業のやり方にはいろいろな方法があると思う。学習者の国籍によっても全く異なった方法が求められる。今回は、非漢字系(非漢字圏)の学習者の漢字授業について、日ごろモヤモヤしていることを書きたい。
授業で漢字の書き順を1つ1つ説明したり、みんなで一緒に空で書いたり、指名した学生にホワイトボードに書き順に気を付けて書いてもらったりする。漢字の教科書には、1字ずつ書き順が練習できる欄が付いていることが多い。漢字の勉強を始めたころは、書き順の確認をする時に前を向いて熱心に空で書いていた学生が、しばらくすると書き順に無頓着になっていくような気がしている。
それは慣れてきて自分でできるからなのだろうか。もちろん個人差があり、教科書の書き順練習欄を埋めながらサクサク進め、前に出てホワイトボードに書いてもさらっと書ける学習者もいる。しかし、教科書のマス目の練習欄に書きこむところを見ていると、書き順をまったく無視して自己流で書いている学習者も多い。
書き順が自己流でもその漢字が書けて覚えられればいいのかもしれない。ただ、書き順は字形に影響すると思われるし、画数が多くなるほど字のバランスにも関わって来る。その日に授業で扱う漢字すべてに同じ時間はかけられないので、これは字形やバランスに注意が必要だと思う漢字を選んで、書道風に扱ってみることにした。
一人ずつに手本とミニホワイトボード、太い黒のマーカーを配って、まず見本を前で示してから、ゆっくり書き順と字形に留意して書いてもらう。そうすると、教科書だけでやっているよりも、意識も字形や書き順に注意が向けられて、効果的に見えた。ところが、その効果が練習シートや宿題プリントに反映されていない学習者がいるように思う。
字形に関して言えば、学習者の提出してきた宿題の漢字シートなどを添削して、字形を直したりすることがある。ところがふと、日常のいろいろなものに書かれている漢字を見ると、あらゆるフォントのデザインがあって、教科書と全く異なっている。漢字は一つ一つが何らかの意味と形を表しているだけに、デザイン次第で多様で魅力的なフォントを作れるんだなとつくづく思う。日本人はフォントが違っても特に意識せず認識するが、非漢字系の外国人にとってはどうなんだろう。
そんな風に考えると、教科書体を基準に添削したり指導したりすることを改めて考えてしまう。学習者が漢字の勉強がつらい、イヤだ、嫌いだとならないよう、漢字学習のモチベーションを高め、実生活や勉強で少しずつ使えるようになるためにどんな授業をしたらいいのか、これからも試行錯誤が続く。

コメント
素敵な記事をありがとうございます!漢字教育に於ける書き順と字形の重要性に就いて、とても共感しながら読みました。特に「書道風アプローチ」の実践は目から鱗でした。確かに、太いマーカーで書く事で、字形の釣り合いを体感し易くなるのでしょうね。
一点追加で考えたのは、「漢字の多様性」です。確かに街中では教科書体とは異なる設計の漢字が溢れていますが、これは逆に「正解は一つじゃない」と言う柔軟な学びの機会にもなるかも知れません。例えば、看板の写真を教材に「この字のどこが教科書体と違う?」と問い掛ける事で、学習者が漢字の骨組みを意識する切っ掛けになるのでは、と思いました。
学習者の遣る気の維持は永遠の課題ですが、この様な試行錯誤こそが教育の醍醐味だと感じます。これからもブログ楽しみにしています!
漢字学習における先生と学習者、双方のもどかしさが正直に描かれていて、とても共感できました。ただ問題を指摘するだけでなく、柔軟で創造的なアプローチの提案もあり、前向きな気持ちになりました。「モヤモヤ」を新しい学びのきっかけに変える視点が素晴らしいと思います。